2011-12-29

深夜食堂とスカルラッティ

ここのところ、『傷だらけの天使』を録画して夜中に見たりしている。

目黒の某洋食屋で二三度見かけたショーケンは、頭の狂った元アイドル然としていて、何 かの企画に引っ張り出そうとする(らしい)怪しい若い奴に、いろいろ言ってる中身はともかく、何だか妙に物悲しかった。一番最初に目撃したとき、あ、ショーケンだと思って顔をみたら、こちらを見返してきた目つきにも嫌なものがあった。と、まあそれはともかく、『傷だらけの・・・』のときのショーケンは間違いなく格好よかったし、フィルム映えのするスタアであったから、この再放送はおおいに楽しい。

時代のせいもあるのだろうが、映像には力があるし、毎回めちゃくちゃなストーリーも、岸田今日子の色気も、岸田森の怪演も、何もかもが今なお新鮮で面白い。水谷豊はこの作品と『青春の殺人者』で子役から俳優になったのかもしれないなどとも思うし、ゲストの元錠前屋ちんぴら小松政夫とのからみなど、後の『相棒』での刑事と仕立て屋の芝居とあわせると感慨深いものがあったりもする。この小松政夫にかぎらず、毎回のゲストもなかなか豪華で、元印刷工偽札づくり有島一郎が包丁を振り回してやくざに殺される、などという珍しいシーンも面白い。

そして、やはりこのシリーズの最大の功労者(?)のひとつとして、当時、実に新鮮で画期的だったテーマ曲や挿入音楽を忘れることはできない。『太陽に吼えろ』や『相棒』の成功もまた、音楽の役割が大きい。ヒットしたドラマはテーマ曲はもちろんさまざまなシーンに入る劇伴が例外なくよくできている。一回限りのチョイスをすればよい映画や舞台とはまた違い、ドラマの劇伴は使いまわしが多いから、どんなアレンジのどれが来るか、はドラマの構造を明らかにする役割さえ果たす重要なもので、その出来栄えこそ、実はドラマを支えていると言っても過言ではない。クインシー・ジョーンズのやったいくつかの名作なども思い浮かぶ。
という話の続きとしては変かもしれないけれど・・・

ついさっき『深夜食堂』を録画で見た。オダギリジョー(ちゃんと韓国人にもサインしてやれよ^^;)と黒谷友香がゲストの最終話。ふたりのへぼ演技、とりわけ子役にも劣る黒谷の拙さは興をそぐこと夥しく(ふたりともシャシンでは良さがでるんだけどね)、一方リリーフランキーの良さは相変わらず半端ではない、などということはとりあえず脇において、これの場合は一回限りのチョイス(だろう)のスカルラッティのソナタがそれ自体として魅力的だった。タイトルロールで確認するとK.208で、そのあたりのものなら30年くらい前に結構譜面を見ているはずなのだけれどすっかり記憶になかった。早速楽譜をみて音をひろうと、やさしそうでいて、やはりなかなか知略に富んでいて面白い。スカルラッティとしては珍しいゆっくりしたテンポがもともと意図されていて、奇妙にしみじみとした味わいのある一品だ。それにしても初見が利かなくなっていてショックだな~、もっと鍵盤にさわらないといけません。ことのついでに、『深夜食堂』なんだから、いくら映像化とはいえ、食堂主人の見ない、知らない部分を描写するのは如何なものか、とちょっと八つ当たりしておきます。

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